図書館 / 東京23区の特殊性

 東京23区は特別区で、一般的な市町村と同じように、区長は公選で、区議会があり、条例が制定でき、課税権などを持っています。図書館も各区立図書館が独立しています。政令指定都市の場合は、各区の図書館は、市全体で一括して管理していますから、最寄の図書館に読みたい本がなくても、オンラインで予約すれば、他の区の図書館から配送してもらえます。
 東京23区の場合は、各区立図書館は独立していますから、最寄の図書館に読みたい本がなければ、都立図書館に協力貸し出しを依頼するか(都立図書館>協力貸出とは何ですか?)、他の区立図書館等に相互貸借を依頼することになります(東京都の公立図書館ネットワーク)。手続きの方法は、各区立図書館で異なりますが、オンラインで完結させることはできないようです。その意味では、各政令指定都市の方が、図書の貸し出しに関しては、利便性は良いようにも思われます。


政令指定都市並みの蔵書数
 しかし、各自治体の蔵書数を比べると、そうとも言えないようです。
 東京都公立図書館調査などを参照して、各自治体の人口と蔵書数をまとめると次のようになります。なお、データの年度はそれぞれ異なるので、あくまで比較の目安に過ぎません。
 神戸市、京都市、福岡市といった人口150万前後の政令指定都市の市立図書館では、200万冊前後の蔵書がありますが、東京23区の大田区、世田谷区、杉並区、練馬区の図書館には、200万冊近い蔵書があります。また、西宮市、姫路市、高松市など地域の中核都市の図書館には、100万冊以上の蔵書がありますが、東京23区の大半の区の図書館には、100万冊以上の蔵書があります。したがって、東京23区の区立図書館の利用者にとって、協力貸し出しや相互貸借は、ほとんど必要ないと思われます。
自治体名人口蔵書数
東京都13,870,36851,177,057
都立中央2,247,008
千代田区68,296550,866
中央区175,216654,552
港区263,9701,175,995
新宿区346,3131,075,099
文京区230,2011,403,486
台東区208,824608,037
墨田区282,085581,603
江東区535,3051,582,252
品川区406,3621,126,062
目黒区279,2511,181,851
大田区732,0741,806,273
世田谷区917,7051,927,694
渋谷区230,115846,956
中野区335,187943,713
杉並区572,4681,962,156
豊島区289,457794,637
北区355,1701,389,147
荒川区217,233861,722
板橋区570,0761,629,083
練馬区739,7571,885,686
足立区691,3721,461,060
葛飾区465,2851,308,906
江戸川区688,5011,541,610
区部計9,600,22328,298,446
八王子市561,0341,669,700
立川市185,552923,917
武蔵野市148,196974,920
三鷹市190,173814,791
青梅市129,918627,280
府中市259,5721,563,784
昭島市114,279492,941
調布市238,9521,352,583
町田市431,0181,186,838
小金井市124,713504,144
小平市196,5431,178,109
日野市187,180835,120
東村山市151,598727,532
国分寺市128,691595,167
国立市76,182355,753
福生市56,055464,912
狛江市82,723304,259
東大和市84,920467,170
清瀬市74,590405,023
東久留米市116,760495,906
武蔵村山市71,236323,489
多摩市148,107777,999
稲城市93,486678,155
羽村市54,386415,184
あきる野市79,648640,738
西東京市205,943781,210
市部計4,191,45519,556,624
瑞穂町32,134209,773
日の出町16,39091,596
檜原村2,01844,671
奥多摩町4,69084,980
町村部計55,232431,020
大島町6,96931,226
神津島村1,76918,877
三宅村2,21514,286
八丈町6,85738,982
青ヶ島村1463,000
島嶼部計17,956106,371
神奈川県9,227,9011,194,841
横浜市3,769,5954,102,042
大阪府立中央8,784,421280万
大阪市立中央2,768,671225万
大阪市区部計190万
兵庫県5,376,767578,000
神戸市1,503,763215万
西宮市483,5371,036,897
姫路市522,4201,351,397
明石市305,404564,341
芦屋市94,751381,760
京都府 2,501,269132万
京都市1,381,8221,941,816
愛知県7,481,6501,167,819
名古屋市2,319,9283,255,792
福岡県5,101,34077万
福岡市1,632,602202.2万
岡山県1,876,2651,566,009
岡山市716,2531,731,748
倉敷市477,7991,438,026
愛媛県1,293,147728,792
松山市503,865777,574
香川県930,8741,114,739
高松市422,4241,351,507
沖縄県1,468,052878,020
那覇市317,030640,353

県立図書館の存在意義は?
 現在、全国の住民は、都道府県立図書館と、市区町村立図書館の二重のサービスが受けられます。しかし、多くの住民にとって、都道府県立図書館は遠隔地にあり、サービスを受けるのは困難です。
 そこで、都道府県立図書館の存在意義が問われることになります。日本図書館協会では、「県立図書館は市町村立図書館への援助を第一義的な機能と受けとめるべきである」としています(公立図書館の任務と目標)。
 東京都立図書館と大阪府立図書館では、中央図書館の役割を市町村立図書館への援助とし、別館を専門図書館としています(東京都立図書館大阪府立図書館の概要)。
東京都 中央図書館  総合図書館、閲覧のみ、都内公立図書館への協力貸し出し
多摩図書館  雑誌と児童青少年資料の専門図書館 
大阪府 中央図書館  総合図書館、図書館ネットワークの中核的図書館 
中之島図書館 ビジネス支援と大阪に関する資料を提供する専門図書館 
 東京都立図書館と大阪府立図書館の蔵書数を比較すると、次のようになります(大阪府立図書館の基本統計2019)。人口1人当たりの蔵書数は、大阪府立図書館は0.31冊、東京都立図書館は0.19冊となりますから、大阪府は東京都の1.5倍ということになります。ちなみに、兵庫県は0.11冊、福岡県は0.15冊、京都府は0.53冊、沖縄県は0.60冊、岡山県は0.83冊、香川県は1.20冊となっています。

 公共図書館全体で比較すると、人口1人当たりの蔵書数は、だいたい3冊前後ですが、滋賀県は7冊、神奈川県は2冊となっています。

 いずれにしても、大規模な政令指定都市の図書館には200万冊以上の蔵書があり、オンラインで予約、配送が完了するようになっているのですから、図書館利用者にとっては、恵まれた都市環境といえます。
 いわゆる大阪都構想は、大阪市を人口60〜70万人程度の4つの都市(特別区)に分割しようというものでしたが、府と市の中央図書館が並存することも、「府と市によるムダ」と指摘されていました。しかし、市立図書館は4つの区立図書館に分割して残すほかないのであって(「都構想で図書館廃止」は誤り)、大阪市の図書館利用者にとっては、恵まれた環境を失うことになってしまいます。
 都道府県立図書館と市区町村立図書館が並存していることは、二重行政といえるでしょうが、大阪都が実現したところで、それが解消されるわけではありません。東京都立中央図書館は、個人への貸し出しはせず、協力貸し出しを通じて、都内の小規模公立図書館への支援に重点を置くことにより、二重性を解消しようとしています。
 東京の場合は、23区全体の人口は960万人もあり、東京都全体の人口1387万人の約7割を占めています。大阪の場合は、大阪市の人口は276万人で、大阪府の人口878万人の約3割に過ぎません。政令指定都市を解体して、スケールメリットを失ってまで、大阪都を実現する意味はどの程度あったのでしょうか。

岡山県立図書館は日本一
 岡山県立図書館は、全国の都道府県立図書館で来館者数、個人貸し出し冊数とも、14年連続で全国1位を記録していました( 来館者14年連続日本一 岡山県立図書館のこだわり)。2019年度は高知県立図書館に抜かれたものの、その後トップに返り咲いています(全国屈指の利用 岡山県立図書館 「V字回復へ」)。
 蔵書を比較すると、次のように岡山県立図書館は、政令指定都市の神戸市図書館よりも充実しています。岡山市も政令指定都市で(総務省>指定都市一覧)、図書館の蔵書もかなり充実しています。 

山県

山市

敷市

戸市

庫県
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