交通・宅配 / マニアックな宅配規制
2023/1 
 ゆうパックやクロネコなどの宅配便の規制がどんどんマニアックになっています。

「品名は具体的に」
 日本郵便アプリには、あて名ラベル作成機能というものがあります。スマホでデータを入力すると、認証コードと二次元コードが作成されます。そのいずれかを使えば、郵便局のプリンターで、あて名ラベルを印字できます。
 ラベルの品名は次の欄に入力します。「具体的な品名を記載する」ということですが、この欄には20文字しか入力できません。

 具体的な品名は次のように記載するということです。ユニフォームやウェットスーツは衣類で良いように思われます。どうして、ここまで詳細に書かなければいけないのでしょうか。

 クロネコも、具体的な品名記入を要求しています( 送り状(伝票)の品名の書き方を教えてください。)。それにしても、バッテリーのないデジタルカメラというのはあるのでしょうか。

 数多くのフリマアプリの出品で、商品の送り方には自信があるという「梱包マン」は次のように述べています(ヤマトの伝票の書き方は?着払い、複数、われものを送る時のポイントも)。実体験から得た認識と思われます。

 
郵便局員が意味を理解していない
 なぜ、このような詳細過ぎる具体的な品名記入を要求するのか、納得できる説明は郵便局のサイトのどこにも示されていません。さらに問題なのは、郵便局員が手続きの意味を十分に理解していないことにあります。
 以前、札幌まで自転車を送ったことがあります。ピストバイク(自転車に乗る )を分解して、170サイズのゆうパック2つに収めて送りました。ところが、到着が予定の日の翌日になってしまいました。自転車は航空便で運べないと思って陸送したということです。
 その後、那覇までタイヤだけを送りましたが、「自転車は手荷物として飛行機に預けることができるから、航空便で送ることは可能のはず」と念を押しておいたら、航空便で予定通りに到着しました。
 今回の那覇行きで、みりんをゆうパックで送ろうとしたら、受付を断られました。帰ってから調べてみたら、アルコール度数24%以下なら航空便で送れるそうです。さらに、酒税法上、アルコール度数が制限されている商品はアルコール度数を記載する必要はないそうです(ハガキのウラの郵便情報)。みりんは酒税法上、アルコール分が15度未満に制限されています(みりん(本みりん)とは?分類や特徴についてもご紹介!)。
 また、コンセントにつないで使う大型の口腔洗浄機を送ろうとしたら、「口腔洗浄機(バッテリーなし)」と記載するように言われました。これだけで14文字になってしまいますから、残りは6文字しかありません。すべての具体的な品名を記載するなど到底無理です。さらに、充電式の電気製品を送ろうとしたら、「製造元に製品情報を問い合わせる必要がある」と言われたので、送るのを断念しました。
 気になったので、家に帰ってから調べてみたら、郵便局員のこれらの対応は、リチウム電池と関係があるようです。
 現在では、ほとんどの充電式電気製品には、リチウムイオン電池が使われています。そのような製品を航空便で送るためには、リチウム電池マークというラベルを貼り付ける必要があります。リチウム電池マークの記入方法は次のとおりです(引受可能なリチウム電池)。たいていの場合は、@に「3481」、Aに「967」、Bに電話番号を記入します。リチウム金属電池は、もっぱらコイン型電池(パソコン部品のボタン電池と呼ばれているもの)として使われていますが、現在のところ、コイン型電池は規制の対象とはなっていません。

 リチウムイオン電池の使わている製品を複数送る場合も、ラベルは1枚で良いそうです。電池を外して送る場合は(電池がなければ使えないと思いますが)、ラベルを貼る必要はありません。ただ、「リチウム電池なし」と追記するよりも、あえてラベルを貼っておいた方が手間が省けるとも言えます。

パソコンは預けることができる
 リチウムイオン電池は空港の手荷物検査でも問題となります。
 国内線では、ノートパソコンやスマートホンなどリチウムイオン電池の使わている電気製品は、手荷物として機内に持ち込むこともできるし、預けることもできます。ただし、予備電池は持ち込みだけが可能です(【国内線】リチウム電池(リチウムイオン電池)を使用した電子機器を機内に持ち込むことはできますか?)。具体的な基準は次のとおりです。160Whは43,243mAhですから、実質的には、すべてのノートパソコンやスマートホンは、持ち込むこともできるし、預けることもできます。

 手荷物検査ではX線透視を行いますが、次のように結構鮮明に内容物が分かるようです(トランク一体型可搬式検査装置)。材質によって色分けしたり、危険物を示す機能もあるようです。

 持ち込み手荷物検査で、よく引っかかるのがハサミです。そのほか武器になりそうなものは、だいたいアウトです。これらのものも、手荷物として預けることはできます。神戸空港でバッグの中に、パソコンやスマホ、電池、ケーブル類を入れておいたら、トレーに取り出して再検査となりました。那覇空港では、これらのものは、あらかじめトレーに取り出しておくように掲示されていました。
 このような扱いは、リチウムイオン電池が内蔵されているからではなく、これらの機器が重なって収納されていると、バッグの中身が良く確認できないからのようです。

相次ぐ航空機事故
 「リチウム電池=危険」という意識が高まったことには、2010年9月3日にドバイで起きた、米貨物輸送大手UPSの貨物機の火災墜落事故が関係しているようです。この事故では、乗員2人が死亡しています(米UPS<UPS.N>の貨物機がドバイで墜落、乗員2人死亡)。貨物のリチウム電池が原因となって火災を引き起こしたと強く疑われていますが、特定はされていません。再現テストでは、次のように、隣り合った電池が連鎖的に燃焼しています(リチウム電池と危険物輸送)。「貨物室内の気圧も25%下がるので、電池の表皮は膨張する。破裂すれば、内容物の引火性の非常に高い電解液が飛散する」ということですが、それぐらいの減圧で電池が破裂するのでしょうか。

 B787型機は2011年10月26日に運航を始めた新型機ですが、部品として採用されたリチウムイオン電池が原因となったトラブルが2013年1月に続発しています。
 2013年1月7日、JAL008便がボストン空港に着陸後、火災事故を起こしています。2013年1月16日、ANA692便が宇部から羽田へ飛行中、香川県上空で電気室に煙を探知し、高松空港へ緊急着陸しています。米運輸安全委員会の調査によると、リチウム・イオン電池の設計に欠陥があったということです(リチウム電池と危険物輸送)。
 以上のように、リチウムイオン電池が関係した航空機事故が起きていることは事実です。しかし、貨物機の火災墜落事故ではリチウム電池が原因とは特定されていません。また、貨物として大量の電池が密集して梱包されている場合と、パソコンやスマホでは危険度が異なります。B787型機ではリチウムイオン電池が原因となっていますが、それは航空機の設計ミスによるものです。
 2013年度から2017年度の5年間で、リチウムイオン電池を搭載した製品について、582件の事故が独立行政法人製品評価技術基盤機構に通知されています。死亡は1人、重傷は2人、軽傷は47人です。発生場所は次の通りです(5年で2倍以上に!リチウムイオンバッテリー搭載製品の事故)。

 1974年から2023年3月12日まで、国内では1463件の航空事故が発生していますが、その中には高松空港への緊急着陸は含まれていません(運輸安全委員会トップページ > 航空 > 航空事故の統計)。事故ではなく、「事故につながりかねない重大インシデント」と扱われています(全日空の787、高松空港に緊急着陸 機内に異臭)。

宅配荷物は旅客機で運んでいる
 ところで、航空貨物はどのように運ばれているのでしょうか。
 この点については、「日本には日本貨物航空などの貨物航空会社もあるが、国際線のみの運航で国内線は運航していない」「国内宅配便輸送はトラック(フェリーなど海路含む)、鉄道(JR貨物)、そして国内航空旅客便の床下貨物スペースが、輸送区間などに合わせ、適材適所で使い分けられてきた」(鉄道と競合?ヤマトとJAL「国内航空貨物便」の行方)ということです。
 次の図のように、旅客機の下半分は貨物スペースとなっています(「航空貨物」輸送どんな仕事? 生鮮食品や動物も運ぶ)。ここには、旅客から預かった手荷物と一緒に宅配荷物も収納されます。

 旅客が手荷物を預けるときは、具体的品目など、いちいち申告する必要はありません。パソコンも同様です。X線透視で、刃物や武器になりそうな工具などが見つかっても問題になることはありません。ところが、宅配荷物になると、具体的品目の記載が要求されます。しかし、空港検査では、X線透視の内容と、具体的な記載品目とをいちいち照合するはずがありません。そんなことをしていれば、いつになっても飛行機は出発できません。具体的品目をいちいち申告させるというのは、全く無意味でマニアックな規制というほかありません。リチウム電池マークについても、手荷物の場合は貼付する必要はないのに、宅配荷物にだけ要求するのもおかしな話です。マークを貼付したところで安全性が増すわけではないので、単なる呪(まじな)いのようなものにも思えます。

翌々日には到着
 今回の沖縄行きでは、自転車を持って行ったので、荷物が増えてしまいました。そこで、荷物の一部をゆうパックで送りました。郵便局の窓口で、充電式家電やみりんが送れないと言われたので、わざわざ荷造りをし直して送りました。荷物は、次のように翌々日に到着しました。
 沖縄から帰るときは、リチウム電池マークを貼付し充電式家電を荷物に入れました。みりんなどの調味料も同梱しました。荷物は次のように、翌々日に到着しました。

 開封したオリーブオイルは、栓をテープで巻いてポリ袋に入れておきましたが、減圧のため中身が少しこぼれていました。しっかり蓋のできるソースや醤油は大丈夫でした。
 行きの便で自転車を預けるとき、タイヤの空気を抜き忘れましたが、パンクすることはありませんでした。細いタイヤで硬めに空気を入れてある場合は、少し空気を抜いておいた方が良いと思います。