宮古島
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トゥリバー地区
トゥリバー地区は、次の地図の左上の曲がりくねった細い海水路の外側の部分です。この細い海水路が元の海岸線で、トゥリバー地区は埋立地です。ヒルトン沖縄宮古島リゾートの南側では、キャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾートの建設が始まっています。 キャノピーbyヒルトンは、ヒルトンブランドのブティックホテルだそうですが、ヒルトン沖縄宮古島リゾートの別館のようなものではないかと思われます。2026年春に開業予定です。次の俯瞰図の左がキャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾートです(「キャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾート」2026年春 開業予定 | 三菱地所)。三菱地所と鹿島建設が事業主で、ホテル運営はヒルトンが行います。三菱地所は、下地島空港ターミナル事業や宮古島シティアンドリゾート買収、ローズウッド宮古島など、宮古島で積極的に観光開発を進めています(アトールを三菱地所に売却/シティアンドリゾート社)。 トゥリバー地区の「みやこサンセットビーチ」は、中央に大きな岬、両端に小さめの岬、2つの入り江という典型的な人工ビーチの形をしています。北側の入り江は突堤で囲まれています。浜には傾斜をつけ、白砂が敷き詰められています。このようにして、波と風を防ぎ砂浜の維持を図っています。 「南側ビーチの養浜材には,中央粒径が0.6 mmである慶良間島の海砂が用いられている.浸食が起こっている北側ビーチの養浜に用いられた砂は,平良港の浚渫土砂を篩にかけたものであり,南側ビーチの養浜材に比べて,粒径が細かく,軽量である」(サンゴ砂礫により構成された人工海浜の侵食メカニズムに関する現地調査)ということです。 南側が延長450mの海浜I、北側が延長500mの海浜IIです(ビーチ・施設棟|行政情報|宮古島市)。2023年7月1日から、海水浴場が海浜Iから海浜IIに変更になりました。「遊泳はハブクラゲネットの内側でお願いします」ということです。(みやこサンセットビーチ(トゥリバー地区)利用案内について|市の組織|宮古島市)。2024年は5月1日に海開きということです(【公式】2024年5月1日「みやこサンセットビーチ」海開きのお知らせ | ニュース&トピックス | 沖縄・宮古島のホテルなら【ヒルトン沖縄宮古島リゾート】)。 宮古島では人工ビーチは珍しいですが、沖縄本島の主要海水浴場の多くは人工ビーチです(沖縄県の人工ビーチ整備から見た海岸利用に関する研究)。 沖縄本島の人工ビーチは、1980年代にリゾート開発業者によって西海岸に造られたものと、1990年代以降に公共事業として那覇広域都市部に造られたものとに大別されます。利用可能形態は、次のように、前者は海水浴とマリンスポーツに限定されているのに対し、後者は、ビーチスポーツ、バーベキュー、散策など地元の住民も気軽に利用できるよう配慮されています。 このような違いは、次のように、海水浴の慣習が、観光客と地元民では異なることに関係しているようです。
宮古島では市の条例で公園やビーチでのバーベキューは禁止されています。海辺でバーベキューをする場合は、宮古島東急ホテル&リゾーツのマイパマや、ヒルトン沖縄宮古島リゾートのプールサイドBBQなどホテルの施設や民間のバーベキュー場を利用することになります。 トゥリバー地区の埋め立ては、コースタルリゾート整備事業として、1993年に着工しています。1999年までに埋め立ての80%が完了し、マリーナの一部供用が始まっています。総事業費は170億円で、沖縄開発庁沖縄総合事務局(現在は内閣府沖縄総合事務局)直轄として80億円、平良市(現在の宮古島市)施工が90億円となっています(平良港トゥリバー地区マリーナー部共用)。 宮古毎日新聞の記事によると、2006年7月に、みやこサンセットビーチ海浜Iが供用を開始、その時点で「総事業費は二百二十億円。事業完了予定の二〇〇九年までに、北側五百bの人工ビーチも整備が急がれている」ということでした(宮古毎日新聞2006年7月18日)。2006年9月には、トゥリバー地区のホテル用地購入に大手企業2社が興味を示したものの、いずれも撤退し、2007年2月に、専任媒介業者に4000万円で仲介を依頼することになりました(宮古毎日新聞2007年3月8日)。 2007年8月に、宮古島市はホテル用地をSCG15特定目的会社に40億円で売却する契約を締結します。契約では2年以内に建設工事に着手することとなっていましたが、経済情勢の悪化などを理由に着工期限の2年間延期を要請、2010年に再度の延長を要請していました(ホテル着工再び延期へ/トゥリバー地区|宮古毎日新聞社ホームページ)。さらに、2012年に3度目の延期の要請があり、2016年までの3年間の延期で合意しました(契約解除で一部変更/トゥリバー土地売買|宮古毎日新聞社ホームページ)。 結局、ホテル用地は譲渡から10年近く手つかずのままとなっていましたが、ようやく2017年3月に、三菱地所がホテル用地約13ヘクタールを30億円弱で特定目的会社SCG15から購入する契約を締結します(三菱地所、トゥリバー地区取得へ)。 トゥリバー地区のゾーニングは次のようになっています(宮古島コースタルリゾートヒララ > ゾーニング)。 エコゾーンのほとんどが対岸の保安林で、埋め立て以前にあったものです。つまり、埋立地のエコゾーン部分はほんの一部に過ぎません。したがって、このゾーンは、環境にも配慮していることを示すための名目的エリアだと言って良いでしょう。 結局のところ、1980年代に沖縄本島の西海岸に造られた人工ビーチ付きホテルのリゾート開発を、宮古島では公共事業として行ったようなものとも思われます。 宮古島市としては、事業完了予定の2009年ごろには、ホテル建設が始まるように、用地の売却を急いだものの買い手が見つからず、前述のように4000万円の仲介手数料を払って、ようやく2007年に40億円でSCG15特定目的会社に売却する契約にこぎつけます。ホテル用地は約13ヘクタールとなっていますから(ホテル着工再び延期へ/トゥリバー地区)、ゾーン一覧のホテルゾーンとコテージゾーンを含めたエリアと思われます。 契約では、2年以内に着工することが条件になっていたにもかかわらず、買い手のSCG15特定目的会社は、何やかやと理由をつけて着工を引き伸ばし、10年近くが経ってしまいました。契約は解除できることになっていたようですが(契約解除で一部変更/トゥリバー土地売買)、解除となると40億円を返還しなければならず、用地売却問題は振り出しに戻ってしまいます。 そんな宮古島市の窮地を救ったのが三菱地所です。前述のように、2017年3月、三菱地所がホテル用地13ヘクタールを、30億円弱でSCG15特定目的会社から購入しました(三菱地所、トゥリバー地区取得へ)。13ヘクタールということは、コテージゾーンを含んでいることになります。SCG15特定目的会社は40億円で買った土地を30億円で売ったことになり、10億円の損失です。ただし、宮古島市がコテージゾーンを10億円で買い戻し海浜公園に含めたなら、SCG15特定目的会社の損失はなかったことになりますが、2023年3月の第1期宮古島市みなとまちづくり基本計画(第1期宮古島市みなとまちづくり基本計画の策定について>第1期 宮古島市みなとまちづくり基本計画)では、次のように、コテージゾーンのエリアはホテル用地となっています。 三菱地所がホテル用地を買収した背景には、宮古島の観光客の急増があると思われます。2015年1月に伊良部大橋が開通したこともあって、次のように観光客と観光収入は急増していました(第1期宮古島市みなとまちづくり基本計画)。 下地島空港では、2019年3月に民間定期便の運航が25年ぶりに再開し、観光客はさらに増加するとの期待が高まっていました。当初はコロナ禍で出鼻をくじかれたものの、最近では利用客が急速に拡大しています。 |