宮古島 / ホテル建設ラッシュ
2024/2
 宮古島には賃貸住宅がほとんどありません。
 うちなーらいふ住宅情報センター株式会社には、わずかの空き部屋しかなく、しかも高いです。
 ホテルなどの建設ラッシュが始まる2016年以前は、ファミリータイプは5万円〜6万円。単身タイプは3万円〜4万円が相場で、それなりに空き部屋はあったそうです(賃貸空き物件がない異常事態?宮古島で部屋を借りるためにすべきこと〜)。
 ところが、その後、観光客が急増し、アパートやマンション、公共施設、ホテルの建設ラッシュが始まります。建設業者やホテル業者が作業員や従業員の宿舎として、賃貸アパートやマンションの空き部屋を押さえるようになります。さらに、リゾートバイトの寮としても使われるようになり、賃料が高騰したうえ、空き部屋がほとんどない状態となりました。
 コロナ禍で一時は空き部屋が急増したそうですが(【宮古島】家賃バブルついに崩壊〜コロナショックで空き部屋急増〜)、現在では、賃貸物件が足りず、家賃の高騰が続いているそうです(宮古島 賃貸住宅不足続く 観光好調 島外から人手 家賃高騰 新築追い付かず)。今後も、ホテルの開業や増築が予定されるため、住宅の供給不足はまだ続きそうです。
  沖縄不動産・賃貸情報のうちなーらいふによると、那覇市と宮古島市と石垣市の不動産事情は次のようになっています。石垣市と比べても、宮古島市の賃貸住宅は極端に少なくなっています。戸建て分譲や宅地分譲は、ある程度の物件はあるものの、6倍の人口がある那覇市と比べると、8〜10分の1ぐらいですから、相対的に少ないと言えます。
人口 賃貸住宅 戸建て分譲 マンション分譲 宅地分譲
那覇市 312,571人 2673 433 649 307
宮古島市 53,087人 11 55 0 35
石垣市 48,170人 22 32 11 34

7〜12メートルの高さ規制
 ところで、宮古島市では、戸建てや宅地の分譲はあるものの、マンションの分譲はありません。土地が広いから戸建て住宅が建てやすいということもあるでしょうが、宮古島市景観条例に基づく宮古島市景観計画ガイドラインも影響しているものと思われます。
 このガイドラインによると、次のように平良地区の中心部以外の地域の建物には、7〜12メートルの高さ規制が課せられます(宮古島で建築物を建てるなら景観条例にご注意ください!)。ただし、後述のように例外もあるようです。


規制を超えるホテルも多数
 ただし、規制の高さを超えるホテルも多数存在します。
 宮古島東急リゾート(現・宮古島東急ホテル&リゾーツ)は1984年4月20日開業ですから(東急100年史 5章 1980−1989 |東急株式会社)、宮古島市景観条例が制定された2012年以前に建設されています。
 宮古島 東急ホテル&リゾーツ【公式】によると、オーシャンウィング(本館)が6階建て、コーラルウィング(新館)が9階建てとなっています。


 さらに、ホテル敷地内ラグーンエリアにおいて、新棟建設工事が始まりました。完成は2027年夏頃の予定です。


 シギラセブンマイルズリゾートにあるホテルブリーズベイマリーナは1993年に開業しています(ホテルブリーズベイマリーナ|遊び心をくすぐるホテルへとリニューアル)。プロ野球のオリックスは1993から2014年まで22年間、宮古島で春季キャンプを行っていましたが、このホテルが宿舎となっていました。
 ホテルブリーズベイマリーナは、本館、タワーウィング、ハーバーウィングの3棟で構成されています(シギラセブンマイルズリゾート【公式】)。

 シギラセブンマイルズリゾートは、南西楽園リゾートが運営し、宮古島南岸地区の7マイル(およそ11km)約140万坪の敷地には、8つのホテル、プール、ゴルフ場、温泉、レストランを展開しています(シギラセブンマイルズリゾート【公式】)。

 8つのホテルの所在地は次のようになっています(リゾートマップ)。数字が若いほど値段が高いようです。ホテル シギラミラージュ ビーチフロントは、2024年2月1日に開業したばかりです。

 南西楽園リゾートはユニマットグループのグループ会社です。ユニマットグループは、橋洋二氏(1943年3月6日、東京都生まれ)が一代で築き上げた企業グループです。「26歳でファッション系の会社で独立した。その後、飲食、金融、リゾートビジネス、物流全般と、つくった会社は約120社」(橋洋二氏新春インタビュー/南西楽園リゾート 代表取締役社長)ということです。
 ユニマットグループの沿革を参考に、宮古島でのリゾート開発の動きをまとめると次のようになります。リゾート事業に着手してから7年で第1号の「ホテルブリーズベイマリーナ」がオープン、その後、低層のホテル(オレンジ色)を次々に開業してきましたが、2019年のホテル シギラミラージュ以降、規制を超える高層ホテルを相次いで開業しています。宮古島のホテル建設ラッシュの一因となっています。
1986 沖縄県宮古島でのリゾート事業に着手
1993 ユニマットグループホテル第1号となる「ホテルブリーズベイマリーナ」がオープン
2000 ゴルフ場「シギラベイカントリークラブ」オープン
2002 (株)南西楽園ツーリストを設立し、旅行事業を本格的にスタート
2005 シギラベイサイドスイート アラマンダ 」開業
2011 リゾートヴィラ ブリッサ・アネックス 」開業
2013 ザ シギラ 」開業
2015 「リゾートヴィラ ブリッサ・アネックス」が「ウェルネスヴィラ ブリッサ」にリニューアル
「シギラベイサイドスイート アラマンダ」がリニューアル
2017 アラマンダ インギャーコーラルヴィレッジ 」開業
2019 「ホテル シギラミラージュ」開業
2020 「ホテル ブリーズベイマリーナ」本館を全面リニューアルオープン
「ホットクロスポイント サンタモニカ」オープン
「ホテル シーブリーズコーラル」オープン
2021 宮古島初の富裕層向け分譲コンドミニアム第一期100室販売開始
2024 「シギラミラージュ ビーチフロント」開業
 なお、高橋洋二代表は「2003年分の所得税納税額が約3億8000万円と沖縄県内では最も高く」「竹富町民税の半分以上を納めている」そうです(ユニマット代表の選挙登録抹消 沖縄、「生活本拠なし」)。

「一体的な開発」ならOK
 条例施行後に海岸地域景観ゾーンにホテルを建設する場合でも、「一体的な開発において、十分な緑地を確保しつつ、全体として景観に優れたものである場合」は、規制の高さを超えるホテル棟の建設が認められます(宮古島市景観計画ガイドライン)。ガイドラインでは、「一体的な開発」の模範例として宮古島東急ホテル&リゾーツを紹介しています。宮古島東急ホテル&リゾーツは与那覇前浜の保安林(防風林)の一角にあります。敷地はかなり広く、緑地と池の周辺に遊歩道が整備されています(施設案内 | 宮古島前浜ビーチを望む絶景ホテル 宮古島 東急ホテル&リゾーツ【公式】)。


 ヒルトン沖縄宮古島リゾートは、2023年6月18日に開業しています。8階建てで、高さは約39m。客室数は329です(「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」23年6月18日開業、三菱地所と鹿島の不動産開発 | 日経クロステック(xTECH))。宮古島市景観計画ガイドラインによると、交流拠点景観ゾーンは高さは16メートルまでに規制されていますが、建物のあるトゥリバー地区は高さは制限されていません。乱開発は規制しつつ、開発そのものは容認する姿勢のようです。

 ヒルトン沖縄宮古島リゾートに隣接して、キャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾート(地上12階建て、310室)の建設が始まっています。2026年春に開業予定です(「キャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾート」2026年春 開業予定 | 三菱地所)。左がヒルトン沖縄宮古島リゾート、右が2026年春に開業予定のキャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾートの完成予想図です。


貸別荘村がホテルに
 一方、2024年にローズウッド宮古島が、砂山ビーチの近くに開業します。55棟のヴィラからなるウルトラ ラグジュアリー リゾートです(ローズウッド 宮古島2024年開業予定)。ヴィラは、客室が個別の建物になっていて、いわば貸別荘村がホテルとなっています。開発場所は6つのエリアに分かれていますが、6つのエリア全てが開発されれば砂山ビーチには一般人は入れなくなる恐れがあるそうです(「ローズウッド宮古島」開業でバブルを上回るアレがやってくる)。
 このような形式のホテルは、シギラリゾートに見られるように、最近のリゾート地では増えていて、2020年2月に来間島に開業した宮古島来間リゾート シーウッドホテルは、107棟のヴィラとホテル棟(62室)で構成されています(一休.com

 25mのメインプール、レストラン、スパ、フィットネスも併設されていて、すべてのヴィラはプール付きです(宮古島の離島 来間島のリゾート シーウッドホテル【公式】)。


 また、最近では超高級ヴィラも登場しています。
  2023年7月、伊良部島に開業したアルカディアリゾート宮古島は、スイートルーム14室だけのラグジュアリーリゾートヴィラです。アルカディアスイートは2階建て632.79m²の独立棟で、朝夕食付き6名で280万円となっています(【公式】アルカディアリゾート宮古島|全室に無料レンタカー付き)。

 2023年10月時点で、オープン3年以内の新しいホテルは、次のようになっています(宮古島の新しいホテル|2023年開業の高級&格安宿リスト) 。
 オレンジで囲んだのが、いわゆるリゾートホテルで、レストランやフィットネス、スパなどの施設が充実しています。グリーンで囲んだのが、市街地や空港に近いリーズナブルな価格の中規模のホテルです。それ以外は、小規模な低層のヴィラ形式の施設で、リゾートホテルの高めの部屋ぐらいの値段のところが多いです。


ホテル建設ラッシュの宮古島市が追いつく
 宮古島のリゾートホテル建設ラッシュを示す次のようなデータがあります(沖縄・宮古島のリゾートホテルを分析!2024年01月最新版!:施設数や稼働率推移に着目 | HotelBank (ホテルバンク))。2020年から2022年にかけて部屋数が右肩上がりで増えています。リゾートホテル建設には、2、3年かかりますから、このデータからは2018年から2020年にかけて、建設ラッシュがあったことが読み取れます。コロナ禍で建設は停滞したものの、コロナ禍が落ち着いて建設が再開し、2023年後半から部屋数が増え始めています。

 一方、リゾートホテルの稼働率は、コロナ禍で長らく低迷していましたが、2022年後半から順調に回復しています。コロナ禍前は、年間7割程度の稼働率だったのが、最近では6割を超える勢いです。部屋数が6割ほど増えていることを考えれば、全体では宿泊客は大幅に増加していることになります。

 2022年の宿泊施設の収容人員は、石垣市と宮古島市はほぼ同数です(令和4年「宿泊施設実態調査」の結果について)。

 2020年は、石垣市の方が、3000人くらい多かったですから(令和2年「宿泊施設実態調査」の結果について)、ホテル建設ラッシュの宮古島市が一気に追いついたことになります。

 コロナ禍前は、石垣空港と宮古空港の利用客数の差は30〜40万人ほどで推移していました(空港別国内線及び国際線乗降客数(昭和61年度〜令和3年度))。もともと、マングローブや離島めぐりなど観光資源の豊富な八重山諸島の方が観光客は多かったのですが、八重山諸島の小浜島が2001年4月〜9月に放送されたNHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」の舞台となったことから、一気に差は拡大しました。その後、利用客数の増加により石垣空港が手狭となったことから伸びは鈍化していましたが、2013年に新石垣空港が開港したことにより、利用客は一気に増加しました。一方、2014年に伊良部大橋が開通したことから、宮古空港の利用客が増え始め、2019年の下地島空港ターミナル供用開始を見込んで、宮古島人気への期待が高まり、ホテル建設ラッシュとなりました。新石垣空港利用客は竹富島のホテルにも泊まるので、竹富島も含めた石垣市と宮古島市の宿泊施設の収容人員の差は、2020年時点では両空港の利用客数の差を適正に反映したものといえそうです。したがって2022年時点の現状では、宮古島のホテルが増えすぎた感じもします。

石垣市のリゾートホテルは、市街地周辺に
 宮古圏の宿泊施設は、ほぼ宮古島市に集中していますが、八重山圏の宿泊施設は、石垣市の他に、竹富町(竹富島、小浜島、西表島)にも分散しています(令和4年版観光要覧W 沖縄県内MAP)。宮古島市のリゾートホテルは、上野や下地などの周辺地域に分散していますが、石垣市のリゾートホテルは、市街地周辺にあります。
 リーズナブルな施設も含めると、宮古島の平良市街周辺にも多くのホテルがあります。

 一方、石垣島では、北岸の裏石垣と言われる地域に、リーズナブルな施設が多いようです。